25年前入居した時、隣の奥さんは
ピアノを弾いていた。
昼となく夜となくショパンのマズルカを
マイペースで練習されていて、どこで
指がつっかえるか何となく予測でき、
心の中でエールを送りつつ
数年が過ぎ、ご主人の転勤で転居された。

その次に越してこられた奥さんは
若くてハツラツいつも元気いっぱいで
何かおすそ分けをすると
ソッコーでお返しを持って来られる
幼稚園ママだった。

三番目に越して来られた奥さんは
髪をひっつめにして柔らかい笑顔を
見せてくださっていたが、ほどなく
近くの新築マンションに越していかれた。

その次の奥さんは、バス停で佇んでいても
気軽に声を掛けてくださるような気さくな方
だったが、野球好きなご主人の母校の近くを
終の棲家にすると越していかれた。

そして、入れ替わりに入って来られた奥さんは
子ども返りをされたようで、ご主人が毎日
クールバッグに入った宅配弁当を届けていらっしゃる。

どの方とも特に親しかったわけではないけれど
軽い挨拶だけだったとしても、お隣に誰かが
居てくださることの安心感や安堵感のような
ものにずっと守られてきたこと。
そのことにとても有り難さを感じている。